「妖怪も読めぬ政局」ではなく、妖怪が読めないのは物質的現実

「妖怪も読めぬ政局」ではなく、妖怪が読めないのは物質的現実

 

 読売新聞の編集委員・伊藤俊行は、「妖怪も読めぬ政局 国民にたまる不満」と題して次のように書いている(「読売新聞」2024年4月7日朝刊)。

 「国会周辺ではよく、「覚(さとり)」に遭遇する。日本各地に言い伝えのある妖怪「覚」が人の心を読む能力を持つように、権力者の心や政局を読み、今後の展開を予想する。正体は老政治家、ベテラン秘書、古参ジャーナリストなどで、官僚や若い政治家はその意見を聞きたがる。

 最近、「覚」の見立てが外れがちなのは、岸田文雄首相の「予測不可能性」ゆえだ。」(「読売新聞」2024年4月7日朝刊)

 この妖怪が読めないのは、権力者の心や政局ではなく、物質的現実そのものであるようだ。それは、権力者の動きや政局を規定している物質的事態そのものである。

 この物質的事態とは、日本の人びとに、アメリカの占領下でGHQによって受けた屈辱を追体験的によびおこし、現在の日本国家のアメリカ国家からの真の自立を追求する、というナショナリズムを日本独占ブルジョアジーが流布していることであり、このイデオロギーにもとづいて労働者およびその他の諸階級・諸階層を国家のもとへ国民としてよりいっそう強固に統合する動きである。

 これは、現在直下のものとしては、アメリカの大統領選挙でのトランプの勝利をみすえて、「アメリカ第一」主義のトランプと自分たち日本の支配階級は心中するわけにはいかない、というものでもある、とも言える。

 少し前から捉えかえすならば、安倍暗殺——旧統一教会にかんする暴露——今回の安倍派の解体と自民党の再編という一連の動きをその根底から規定しているところのものは、この独自の日本のナショナリズムの内と外への貫徹を策す日本独占ブルジョアジーの動きである、といわなければならない。

 

株価と物価のつり上げによって衰退の危機ののりきりをはかる日本帝国主義

株価と物価のつり上げによって衰退の危機ののりきりをはかる日本帝国主義

 

 日本銀行は、マイナス金利政策を転換した。このように是正したとはいえ日銀がなお金融緩和政策をとりつづける態度であることに規定されて、株価は上昇しつづけ、円は下落した。

 マイナス金利であるということは、貸し借りされる資金が利子を生まないばかりではなく持ち出しになってしまう、ということなのであるからして、これでは資本主義が成り立たないのである。日銀がこのような政策をとっているかぎり、日本経済は衰退していくばかりであったのである。

 日銀は、銀行が諸企業に資金を貸すことを強制するために、銀行が日本銀行に資金をあずけることに手数料をとった(すなわちマイナス金利)のであった。諸独占体・諸企業は、この状況に依存して、銀行からきわめて低い金利で借りた資金を自企業の資金繰りにまわした。デフレであって諸商品が売れないという諸条件のもとでは、IT(情報技術)や半導体やまた脱炭素関連、これら以外の諸産業・諸企業では、新たな品質や性能をもつ諸商品を開発し生産するために設備を建設したり更新したりすること(設備投資)は、あまりにも危険だったからである。

 政府は、このように死に体となった諸独占体・諸企業を救済するために、膨大な国家資金を投じ、この国家資金を捻出するために膨大な赤字国債を発行した。日銀は、国債の価格の暴落(すなわち利子率の高騰)をくいとめるために、市場から国債を買いつづけた。

 日本の国債累積残高は、2023年度末には1068兆円に上ると見こまれている。この累積残高は、GDP(国内総生産)の2倍を超えているのである。また、2024年3月21日に日銀が発表した、2023年末の国庫短期証券を除く国債・財投債の日銀保有比率は53・78%に達しているのである。

 このように政府が諸独占体・諸企業に直接的に注入した国家資金と、国債を市場から買い入れるというかたちで日銀が市場に投入した国家資金とを自分の懐に入れた金融諸機関・諸独占体・個人投資家などの投機屋どもは、この資金で膨大な株を買ったのであり、たんまりと儲けたのである。これが、株価が上昇しつづけている要因をなすのである。これらの投機屋どもは、儲けた資金を、金融的利益を得るために金融市場で運用しつづけるのであって、彼らが自分の享楽のために消費に回す部分は、彼らの巨額の金融資産のほんの小さな破片をなすにすぎない。この破片は、労働者にとっては目もくらむような額なのである。

 この巨額の金融資産はバブルである。しかし、2008年のリーマンショックのときの貧困層への住宅の押し売りとは異なって、このバブルは、IT(情報技術)・通信技術・AI技術・半導体技術・インターネット情報販売技術・脱炭素技術などの諸技術を開発し生産する諸産業・諸企業と、これらの諸技術を活用する諸産業・諸企業にささえられていることに規定されて、このバブルのまわりをおおう膜は伸縮性に富みどんどん伸びるゴムのように強いので、そう簡単には破裂しないのである。

 しかし、日本の政府・独占ブルジョアジーには、これだけでは足りない。彼ら支配者どもは、製造業とサービス業とをふくむ全産業の諸独占体・諸企業が利益を得るようにするためには、諸商品の価格をつり上げるとともに、労働者たちの消費を拡大しなければならないのである。労働者たちの消費を拡大するためには彼らの賃金を上げなければならない。

 政府と独占資本家どもと「連合」の労働貴族どもが一体となって「賃上げ」を叫ぶゆえんは、ここにある。

 日本の政府・支配階級とその下僕は、労働者たちに賃金が上がったと見せかけて、いろいろな商品を彼らに買わせる、とともに、その賃金の上昇分を商品の価格に上乗せすることを目論んでいるのである。彼ら支配者どもは、労働者たちに商品を買わせたいだけであって、労働者の実質賃金を上げる気はまったくない。大企業の商品の価格は独占価格なのであって、大独占体の経営者どもがつるんでその価格を決定するのである。

 独占資本家どもは、労働者の目の前に、賃金を上げるというニンジンをぶら下げて、労働者たちに徹底的な労働強化と長時間労働を強い、労働という労働者たちの生き血を吸ってみずからの資本を増殖することを狙っているのである。

 このことを正当化し労働者たちをだますためのイデオロギーが「賃金の物価の好循環」論なのである。この掛け声の意味するものは、賃金の上昇分を、いやそれを上回る分を、商品の価格に上乗せして、労働者たちに過酷な労働を強いるとともに彼らを生活苦にたたき落とす、ということなのである。

 そしてまた、名目上の賃金が上がれば、税金や社会保険料も上がる。このようにして、政府・支配階級は労働者たちから収奪するのである。

 さらには、政府・支配階級は、労働者たちに老後の不安をあおりたて、——それと同時に、貯金や預金ではあまり利子はつかないと宣伝して、——投資というかたちで老後のための資金を積み立て増やすことを勧めているのである。労働者たちは、自分のなけなしの賃金の一部を投資に充てるならば、どうしても、株価が上昇することを望んでしまうことになる。ストライキをやって企業に損害を与えることなどとんでもない、という感覚になってしまうのである。これが、政府・支配階級の狙いである。支配者どもは、労働者たちに投資させ、彼らを資本の利潤追求の網の目にしっかりと編みこみ、労働者たちが、自分たちの支配する資本主義社会に決して歯向かうことのない人間に仕立て上げることを目論み、この策動を着々とおしすすめているのである。

 労働者たちは、政府・支配階級のこのような諸攻撃と諸策動をうちやぶり、この資本制生産関係をその根底から転覆するために階級的に団結し、みずからを階級として組織しよう!

 

日銀はマイナス金利政策からの転換を決定。搾取の強化と物価高で労働者たちを苦しめることを基礎にした日本経済の危機ののりきり策だ!

日銀はマイナス金利政策からの転換を決定。搾取の強化と物価高で労働者たちを苦しめることを基礎にした日本経済の危機ののりきり策だ!

 

 日本銀行は、3月19日の金融政策決定会合で、マイナス金利政策から転換することを決めた。マイナス0・1%としていた政策金利を0〜0・1%程度(無担保コール翌日物レート)に引き上げるとともに、長期金利を低く抑えこむための長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)や上場投資信託ETF)などのリスク資産の買い入れを終了することも決定した。

 これは、日銀が物価2%目標を持続的・安定的に達成できる見通しがたったと判断したものであり、17年ぶりの利上げである。

 これは、「連合」の労働貴族どもがにぎる大企業の労働組合に少しばかりの賃上げを認めて労働者たちを懐柔しつつ、物価高で労働者たち・勤労者たちを生活苦に落とし入れるとともに、過酷な労働によって労働者たちの搾取を強化することを基礎にして、日本経済の危機ののりきりをはかる日本独占ブルジョアジーの利害を体現したものにほかならない。

 労働者・勤労者たちは、独占資本家どもの搾取と収奪と抑圧をうちくだくために、階級的に団結しよう! この団結を基礎にして、すべての労働者の大幅な賃上げをかちとろう!

 

自公による戦闘機輸出合意弾劾! 東西帝国主義陣営の軍事的抗争をうちやぶる反戦闘争を展開しよう!

自公による戦闘機輸出合意弾劾! 東西帝国主義陣営の軍事的抗争をうちやぶる反戦闘争を展開しよう!

 

 自民・公明の両党は、日本がイギリスおよびイタリアと共同で開発する次期戦闘機の第三国への輸出を——個別に閣議で決定したりしたうえで——推進することを合意した。戦闘機のこの輸出は、高度な攻撃能力をもつ戦闘機の開発費用を捻出するためであると同時に、インドなどのグローバル・サウス諸国を西側帝国主義陣営の側にからめとっていくことを狙ったものである。

 小野寺五典元防衛相は、「タブーだったものに風穴を開けた。防衛装備の共有は、(輸出先との)強い絆となる」、と胸を張った。これこそ、軍事的にも日本帝国主義を西側帝国主義陣営の一員として雄飛させる、という腹をあらわにしたものにほかならない。

 ウクライナで、パレスチナで、台湾海峡で、というように、米欧日の西側帝国主義陣営と中露の東側帝国主義陣営との軍事的抗争が激化している。

 全世界の労働者・人民は、この軍事的抗争をうちやぶるために、プロレタリア・インターナショナリズムの立場にたって、革命的反戦闘争を展開しよう!

 

トラック労働者はそれどころではない! 青森県知事、残業規制に猛反発「リンゴが運べず、ミカンに負ける」

トラック労働者はそれどころではない! 青森県知事、残業規制に猛反発「リンゴが運べず、ミカンに負ける」

 

 「日経ビジネス」電子版は、次のように報じた。

 <青森県知事、残業規制に猛反発 「リンゴが運べず、ミカンに負ける」

 リンゴが1日で運べなくなり、ミカンに負ける——。全国のリンゴ生産の6割を占める青森県の宮下宗一郎知事はトラックドライバーの残業規制強化に伴う拘束時間の上限引き下げに異議を唱え、拘束時間の上限を緩和するよう国に特例措置を要望した。全国一律に規制するのではなく、各地域の実情を考慮して欲しいと訴える。>

 トラック労働者たちは、超長時間労働を強いられているのである。しかも、わずかばかりの残業規制にも、青森県知事が猛反発するほどなのだ。さらには、残業が規制されれば、その分だけ、労働者たちは賃金が削られてしまうのだ。

 そればかりではない。トラック輸送業の資本家どもは、自企業で雇うトラック労働者の人数を減らすために、荷台を二つつないだトラックを労働者に運転させることをも策しているのである。これは猛烈な労働強化だ!

 このような現状と新たな策動をすべての労働者の階級的団結でうちくだこう! 超長時間労働を許すな! 猛烈な労働強化を阻止しよう! 大幅な賃上げをかちとろう!

 

独占資本家どもの階級的野望をうちくだき、労働者階級の階級的団結で労働者総体の大幅な賃上げをかちとろう!

独占資本家どもの階級的野望をうちくだき、労働者階級の階級的団結で労働者総体の大幅な賃上げをかちとろう!

 

 独占資本家どもは、「連合」傘下の自企業の労働組合にたいして、「満額回答」あるいは「要求以上の賃上げの回答」を出した。これは、自企業の組合の労働貴族どもをつうじて労働者たちをしっかりと自分たちのもとへ抱きこむ、と同時に、優秀な技術性をもった労働者たちを自企業に獲得する、という階級的野望を、独占資本家どもが貫徹したものにほかならない。

 非正規雇用労働者の賃上げの回答が部分的になされたのも、不満を抱くパート労働者たちを懐柔するためのものなのである。なぜなら、正規雇用労働者と非正規雇用労働者とを厳然と区別し、労働者たちの階層的な分化を促進したうえでのそれなのであり、このような階層的な分化を基礎にして労働者たちをよりいっそう搾取することを狙ったものなのだからである。膨大な数の未組織労働者たちには、よりいっそうの過酷な労働が強制されているのである。

 労働者たちは、独占資本家どもによる「連合」の労働貴族どもを使っての階級的支配に抗して、「連合」傘下の労働組合の下部組織から、またその他の組合から、そして組合のない職場から、労働者たちの階級的団結を創造し、強化していこう! この階級的団結を基礎にして、労働者総体の大幅な賃上げをかちとろう!

 

中国、軍事費7・2%増。東西帝国主義の軍事的抗争をうちやぶる反戦闘争を展開しよう!

中国、軍事費7・2%増。東西帝国主義の軍事的抗争をうちやぶる反戦闘争を展開しよう!

 

 全人代において、中国政府は、ことしの予算案を公表し、軍事費については去年と比べて7・2%多い、1兆6655億人民元(34兆8000億円余り)とすることを明らかにした。李強首相は、政府活動報告で「より実戦的な軍事訓練をおこない、国家の主権と安全、それに発展の利益を断固守る」と強調し、軍備を飛躍的に増強していくとともに軍事力の実践的な態勢を強化する、という姿勢と方針をしめした。

 さらに台湾についても「台湾海峡両岸の関係を平和的に発展させ、祖国統一の大事業を揺るぎなく推し進める」と述べ、「祖国統一の大事業」を旗印としながら、アメリカ帝国主義、およびこれと同盟した日本帝国主義、そして台湾政府への軍事的対抗を強化していく態度を表明したのである。

 これらの軍事的諸政策は、アメリカ大統領選挙にトランプが勝利することを見越して、ウクライナに侵略するプーチンのロシアと連携しつつ、アメリカ帝国主義を盟主とする西側帝国主義陣営との軍事的抗争に勝ちぬく、という国家意志を、中国帝国主義習近平指導部が明らかにしたものにほかならない。

 全世界の労働者階級・人民は、労働者・勤労者を搾取し収奪し抑圧する東西の帝国主義、この東西帝国主義の軍事的抗争をうちやぶる革命的反戦闘争を、プロレタリア・インターナショナリズムの立場にたって展開しよう!