株価と物価のつり上げによって衰退の危機ののりきりをはかる日本帝国主義

株価と物価のつり上げによって衰退の危機ののりきりをはかる日本帝国主義

 

 日本銀行は、マイナス金利政策を転換した。このように是正したとはいえ日銀がなお金融緩和政策をとりつづける態度であることに規定されて、株価は上昇しつづけ、円は下落した。

 マイナス金利であるということは、貸し借りされる資金が利子を生まないばかりではなく持ち出しになってしまう、ということなのであるからして、これでは資本主義が成り立たないのである。日銀がこのような政策をとっているかぎり、日本経済は衰退していくばかりであったのである。

 日銀は、銀行が諸企業に資金を貸すことを強制するために、銀行が日本銀行に資金をあずけることに手数料をとった(すなわちマイナス金利)のであった。諸独占体・諸企業は、この状況に依存して、銀行からきわめて低い金利で借りた資金を自企業の資金繰りにまわした。デフレであって諸商品が売れないという諸条件のもとでは、IT(情報技術)や半導体やまた脱炭素関連、これら以外の諸産業・諸企業では、新たな品質や性能をもつ諸商品を開発し生産するために設備を建設したり更新したりすること(設備投資)は、あまりにも危険だったからである。

 政府は、このように死に体となった諸独占体・諸企業を救済するために、膨大な国家資金を投じ、この国家資金を捻出するために膨大な赤字国債を発行した。日銀は、国債の価格の暴落(すなわち利子率の高騰)をくいとめるために、市場から国債を買いつづけた。

 日本の国債累積残高は、2023年度末には1068兆円に上ると見こまれている。この累積残高は、GDP(国内総生産)の2倍を超えているのである。また、2024年3月21日に日銀が発表した、2023年末の国庫短期証券を除く国債・財投債の日銀保有比率は53・78%に達しているのである。

 このように政府が諸独占体・諸企業に直接的に注入した国家資金と、国債を市場から買い入れるというかたちで日銀が市場に投入した国家資金とを自分の懐に入れた金融諸機関・諸独占体・個人投資家などの投機屋どもは、この資金で膨大な株を買ったのであり、たんまりと儲けたのである。これが、株価が上昇しつづけている要因をなすのである。これらの投機屋どもは、儲けた資金を、金融的利益を得るために金融市場で運用しつづけるのであって、彼らが自分の享楽のために消費に回す部分は、彼らの巨額の金融資産のほんの小さな破片をなすにすぎない。この破片は、労働者にとっては目もくらむような額なのである。

 この巨額の金融資産はバブルである。しかし、2008年のリーマンショックのときの貧困層への住宅の押し売りとは異なって、このバブルは、IT(情報技術)・通信技術・AI技術・半導体技術・インターネット情報販売技術・脱炭素技術などの諸技術を開発し生産する諸産業・諸企業と、これらの諸技術を活用する諸産業・諸企業にささえられていることに規定されて、このバブルのまわりをおおう膜は伸縮性に富みどんどん伸びるゴムのように強いので、そう簡単には破裂しないのである。

 しかし、日本の政府・独占ブルジョアジーには、これだけでは足りない。彼ら支配者どもは、製造業とサービス業とをふくむ全産業の諸独占体・諸企業が利益を得るようにするためには、諸商品の価格をつり上げるとともに、労働者たちの消費を拡大しなければならないのである。労働者たちの消費を拡大するためには彼らの賃金を上げなければならない。

 政府と独占資本家どもと「連合」の労働貴族どもが一体となって「賃上げ」を叫ぶゆえんは、ここにある。

 日本の政府・支配階級とその下僕は、労働者たちに賃金が上がったと見せかけて、いろいろな商品を彼らに買わせる、とともに、その賃金の上昇分を商品の価格に上乗せすることを目論んでいるのである。彼ら支配者どもは、労働者たちに商品を買わせたいだけであって、労働者の実質賃金を上げる気はまったくない。大企業の商品の価格は独占価格なのであって、大独占体の経営者どもがつるんでその価格を決定するのである。

 独占資本家どもは、労働者の目の前に、賃金を上げるというニンジンをぶら下げて、労働者たちに徹底的な労働強化と長時間労働を強い、労働という労働者たちの生き血を吸ってみずからの資本を増殖することを狙っているのである。

 このことを正当化し労働者たちをだますためのイデオロギーが「賃金の物価の好循環」論なのである。この掛け声の意味するものは、賃金の上昇分を、いやそれを上回る分を、商品の価格に上乗せして、労働者たちに過酷な労働を強いるとともに彼らを生活苦にたたき落とす、ということなのである。

 そしてまた、名目上の賃金が上がれば、税金や社会保険料も上がる。このようにして、政府・支配階級は労働者たちから収奪するのである。

 さらには、政府・支配階級は、労働者たちに老後の不安をあおりたて、——それと同時に、貯金や預金ではあまり利子はつかないと宣伝して、——投資というかたちで老後のための資金を積み立て増やすことを勧めているのである。労働者たちは、自分のなけなしの賃金の一部を投資に充てるならば、どうしても、株価が上昇することを望んでしまうことになる。ストライキをやって企業に損害を与えることなどとんでもない、という感覚になってしまうのである。これが、政府・支配階級の狙いである。支配者どもは、労働者たちに投資させ、彼らを資本の利潤追求の網の目にしっかりと編みこみ、労働者たちが、自分たちの支配する資本主義社会に決して歯向かうことのない人間に仕立て上げることを目論み、この策動を着々とおしすすめているのである。

 労働者たちは、政府・支配階級のこのような諸攻撃と諸策動をうちやぶり、この資本制生産関係をその根底から転覆するために階級的に団結し、みずからを階級として組織しよう!