日本政府とEUは——トランプの勝利をみすえ——戦略物資の調達をめぐって独自の動き
日本政府と欧州連合(EU)の執行機関は、5月初旬にハイレベルの会議を開き、経済安全保障の強化のための共通原則を明らかにした共同声明を出す予定なのだ、という。その中心は、半導体などの戦略物資の調達において特定国に依存しない構想をうちだすことである、とされる。特定国とは、中国をさす。
これは、アメリカの大統領選挙においてトランプが勝利することをみすえて、トランプが狙う中国との西側帝国主義陣営の経済的分断に対抗し、日欧が主導して日欧の利害をつらぬくかたちでの中国との西側帝国主義陣営の経済的関係づくりを目論むものである、と言える。この動きは、日本の国家権力者と独占ブルジョアジーの立場からするならば、日本型「日本第一」主義というべき新たな日本ナショナリズムの貫徹をなす。
非先端分野の半導体やEV(電気自動車)やまた太陽光パネルなどでは、中国の諸独占体が低価格を手段にして世界市場を席巻している。中国政府は自国のこれらの諸独占体に巨額の補助金を出しているのである。日本およびヨーロッパの政府・独占ブルジョアジーは、この中国の政府・諸独占体の動きに対抗しながら同時に、この中国との貿易をつうじて自国の利益をむさぼらなければならないのである。EUと中国との貿易を見れば、2022年には、中国の対EU貿易黒字が約4000億ユーロ(約67兆6000億円)というように過去最大を記録したのだからである。EUの諸国家権力者は自国とその諸独占体が、中国に利益を吸い取られるのではなく、中国から利益をむしり取らなければならないのである。
共同声明では、「市場をゆがめる産業補助金などの結果、戦略物資で特定の供給源に頼り、貿易が兵器化している」というように、中国を牽制する文言を盛りこむ予定なのだ、という。と同時に、「協調的な取り組みによって、公平な競争条件を促進する」として、保護貿易主義におちいらないことを、アメリカの政治エリートたちや独占資本家どもにも、グローバル・サウス諸国の権力者たちにも、そして中国の国家権力者にも、呼びかける、ということなのである。
東西の帝国主義諸国家権力者と諸独占体は、全世界の労働者たちからいかに大量の剰余労働を搾り取り、その剰余労働を自分たちがいかにして多く奪い取るのかをめぐって、相あらそっているのである。このような諸国家権力者をうちたおし諸独占体の生産諸手段を彼らから収奪するために、全世界のプロレタリアートは国際的に階級的に団結しよう!