日本型「日本第一」主義あるいは「日本優越」主義のイデオロギーの貫徹
岸田がアメリカ議会で演説した内容をもう一度考えよう。
「ほぼ独力で国際秩序を維持してきた米国。孤独感や疲弊を感じている米国の国民に語りかけたい。一人で背負うことがいかなる重荷であるのか、私は理解している。」
「「自由と民主主義」という名の宇宙船で、日本は米国の仲間の船員であることを誇りに思う。共にデッキに立ち、任務に従事し、なすべきことをする準備はできている。」と。
こう言ったのである。
日本の国家権力者に「孤独感や疲弊を感じている米国の国民」とか「一人で背負うことがいかなる重荷であるのか、私は理解している」とかと言われると、アメリカ人は自尊心を傷つけられ、頭にきて「お前、何様だ」、と言いたくなるのではないだろうか。そんなことはお構いなしに、岸田はこう言い放ったのである。
日本の国家権力者と独占ブルジョアジーは、トランプが勝利し、彼が大統領として「アメリカ第一」主義を内外に貫徹し、内向きになるであろうことを見越している、と言ってよい。迫りくるこの事態に対処するために、岸田は、「アメリカは、日本が支えてこそのアメリカだ」「日本あっての日米同盟だ」ということを押しだしたのではないだろうか。
岸田をつきうごかすと同時に自民党をはじめとする政治エリートたちを大きく再編するために動いている日本の独占資本家どもは、日本国家の独自的利害を貫徹するために、日米同盟を自国の力を増すかたちにおいて強化しつつ、同時に、中国・ロシアなどの東側陣営諸国およびインドなどのグローバル・サウス諸国との自国の独自的な関係をつくりあげていく、ということを構想し、この構想を貫徹しつつあるのだ、といわなければならない。
このイデオロギーが、日本型「日本第一」主義あるいは「日本優越」主義のナショナリズムなのである。
このイデオロギーには、日本の労働者たちやその他の諸階級・諸階層の人びとをからめとるために、NHKスペシャル「下山事件」にしめされるように、日本の敗戦と被占領の屈辱を晴らし、日本国家の真の自立をはたすのだ、という内容が盛りこまれている。
それだけではなく、日本民族は優秀なのだ、ということを縄紋時代や弥生時代やまた古墳時代にわたって説く、というものが、そこには盛られている。
私のこのブログの読者が教えてくれた。私は見ていないのだが、「卑弥呼」や「五王」などを描いたNHKスペシャルからしておかしかったのだ、という。それは、日本人は古代から優秀だったのだ、と描きだしているものなのだ、ということである。
こういう話をしていると、わが仲間たちが教えてくれた。稲作は朝鮮半島から日本列島に伝わってきたのではなく、日本列島から朝鮮半島に伝播したのだ、という説までもが飛び出しているそうなのである。
さらには、半導体諸企業が熊本県や北海道に誘致され、諸工場がたてられているのであるが、日本の独占資本家どもは、高度な半導体を開発することに自信をもっているのだ、という。彼らは、アメリカ政府によって日本の半導体産業がつぶされた恨みを晴らす情念にもえているのだ、ともいえよう。このようなものは、技術開発における「日本第一」主義といえる。
これらが、日本型「日本第一」主義のナショナリズムを基礎づけ・流布し・貫徹するための諸契機をなす、といえるであろう。
日本帝国主義国家の国際的な雄飛をはかることを目論んで、このようなイデオロギーを貫徹し、労働者たち・勤労者たちの搾取と収奪と支配を強化する日本独占ブルジョアジーと国家権力者の策動をうちくだくために、プロレタリアートはみずからを階級として組織し団結しよう!