自由貿易体制は揺らぐ程度か。「ブロック化の再来」と言えるか。——トランプ政権の高関税政策の貫徹は?

自由貿易体制は揺らぐ程度か。「ブロック化の再来」と言えるか。——トランプ政権の高関税政策の貫徹は?

 

 読売新聞は、『危機』と題した連載記事の第1回目に「揺らぐ自由貿易体制」「米関税「ブロック化」再来も」という見出しをつけた。

 だが、現下の事態は、いわゆる自由貿易体制が揺らぐという程度のものなのであろうか。トランプ政権がすべての国に一律の関税を課し、貿易赤字国には「相互関税」という名の高関税を課すとしたことは、そして中国政府がアメリカにたいして報復的に高関税を課すと表明したことは、これをもって自由貿易体制は崩壊したことを意味する、というように断定すべきなのではないだろうか。「揺らぐ自由貿易体制」という把握は、日本にたいしてだけは相互関税を免除してほしい、という日本独占ブルジョアジーのあわい願望を投影したものである、といわなければならない。

 また、今日の事態を、1930年代の経済のブロック化とアナロジーして、「米関税「ブロック化」の再来も」というように把握するのは、1930年代に帝国主義諸列強のそれぞれの経済ブロックから弾き飛ばされ「もたざる国」としてドイツ・イタリアとともに悲哀をかこい、ついに戦争に敗北した日本独占ブルジョアジーの怨念にもとづく危機意識の吐露なのではないだろうか。

 今日を1930年代と単純に対比したのだとしても、世界経済の構造は大きく異なる。1930年代は、帝国主義世界経済の覇権国はイギリスからアメリカに代わる過渡期にあったのにたいして、第二世界大戦以後はアメリが圧倒的な力をほこり。21世紀現代ではそのアメリカが没落の危機にあえいでいるのである。

 そして、1930年代には、帝国主義世界にたいして、スターリン主義的に変質したソ連が外的に対立していたのに反して、21世紀現代では、スターリン主義政治経済体制を解体して資本主義的政治経済構造に転化したロシアおよび中国などをのみこんだ帝国主義経済が世界をおおいつくしているのであり、この帝国主義世界経済が、中国およびロシアの東側帝国主義と米欧日の西側帝国主義、そしてグローバル・サウス諸国の三極を基軸として運動しているのである。

 しかも、アメリカ国家が自国経済の衰退の危機をのりきるためにすべての国に高関税を課したことは、この国家が、他のすべての国を自国に対抗する側に追いやったことを意味するのであり、アメリカに対抗する国ぐには、その経済的力とその他の物質的諸条件に応じて新たなかたちで分解することを余儀なくされたのである。

 東側帝国主義の雄である中国は、アメリカに報復的に高関税を課すことによって、すでに自国が——「一帯一路」などの諸政策の実施をつうじて――影響力をもっている国ぐにや日本およびヨーロッパ諸国などを商品=資本市場とする道を選んだ。

 帝国主義国・日本の政府および諸独占体・諸企業は、中国ばかりではなく東南アジア諸国への進出をさらに強化するとともに、アメリカへの投資を拡大することをくわだてている。このことは、日産が、アメリカの現地工場を縮小するのをやめて拡大するのに転じたことに、そして日本製鉄が、USスチールの買収にかんしてトランプが再審査を命じたことに力をえて、当初の方針をつらぬこうとしていることに、端的にみてとることができる。

 EU(ヨーロッパ連合)加盟諸国は、分解をあらわにせざるをえない。フランスのマクロンは、アメリカに投資しない、と対抗心をあらわにしたのであったが、他の国ぐにの国家権力者と諸独占体は、これにはついていけない。ドイツの支配階級は、エネルギーにかんしてはロシアの天然ガスを望み、EU域内と中国への商品および資本の輸出の拡大を渇望しているであろう。極右のメローニ政権のイタリアは、アメリカと連携する道を模索するであろうし、ハンガリーはロシアへの依存をよりいっそう深めるであろう。

 総じて、各国の国家権力者と独占資本家どもは、この経済的危機をのりきるために、労働者たちの搾取を徹底的に強化するとともに、あらゆる勤労諸階級・諸階層の人びとから——物価のつり上げなどをつうじて——よりいっそう収奪することを目論んでいるのである。

 われわれは、まさに、このようなことがらを分析しあばきだし、労働者たち・勤労者たちをプロレタリア階級として組織していくのでなければならない。