〔8〕 労働過程と価値増殖過程

 〔8〕 労働過程と価値増殖過程

 

 

 商品が使用価値と価値との直接的統一をなすのと同様に、資本の直接的生産過程は労働過程と価値増殖過程との直接的統一をなす。

 資本家が生産手段の使用価値とともに労働力商品の使用価値を消費することによって商品が生産されるのであり、この過程が資本の直接的生産過程である。これが「直接的」という規定をうけたところの生産過程とされているのは、流通過程によって媒介されていない生産過程という意味においてである。

 この資本の直接的生産過程は二つの角度から分析されなければならない。この過程を、その技術的側面を明らかにする角度から分析するばあいには、それは労働過程と規定され、この側面は技術学的に考察される。他方、この過程を、その価値的側面を明らかにする角度から分析するばあいには、それは価値増殖過程と規定され、この側面は経済学的に考察される。

 資本の直接的生産過程の一側面をなす労働過程は、資本の労働過程であり、これは、資本家の指揮と統制のもとに・労働者が・労働対象に・労働手段を使って働きかけ、生産物を生産する過程として明らかにされる。賃労働者の疎外された労働である労働そのもの・労働対象・労働手段が、資本の労働過程の三つの契機をなす。資本の労働過程になげこまれその契機として働いているところのものは、資本の定有をなす。

 資本の直接的生産過程のもう一つの側面をなす価値増殖過程は、死んだ労働であり・したがって価値である生産手段が生きた労働を吸収して増殖する過程である。労働過程においては労働者が生産手段にみずからの労働力を対象化するというようにあらわれるところのものは、価値増殖過程においては、死んだ労働たる生産手段が生きた労働を吸収することとしてあらわれるのである。ここにおいては、労働者の生きた労働は資本の生き血となる。生産手段という姿態をとった価値は、この生き血を吸ってみずからを増殖するのである。

 このゆえに、直接的生産過程の実現結果として創造された生産物の価値の大いさは、資本家が前提としての商品=労働市場において、生産手段を買い入れるために支払った価値額と労働者から彼の労働力を商品として買うために賃金として支払った価値額との和よりも大きい。生産物の価値は、生産手段から移転された価値部分と労働者の生きた労働によって新たに創造された価値部分とからなるのであるが、この後者は、労働者に賃金として支払った価値の取戻し部分とそれを超える部分とに分かれるのである。この超える部分が剰余価値なのであり、この剰余価値を資本家が取得するのである。

 このようにして資本は賃労働を搾取するのである。