〔11〕 使用価値と価値

 〔11〕 使用価値と価値

 

 

 第二パラグラフ以下では、始元としての商品の一契機をなすところの、それの論理的に抽象的な諸規定が論述されている。この論述は、始元を出発点とする上向的展開における下向的分析といえる。

 ここでは、資本制生産を物質的基礎として資本制商品の論理的に抽象的な諸規定が明らかにされているのであって、まさにこの抽象性のゆえに、この諸規定は歴史上の単純商品にも妥当するのである。単純商品とは、生産手段を自分で所有して自分で労働する小生産者が生産する商品のことである。

 商品は他の商品と交換関係をとりむすんでいる。すなわち、或る商品は他の商品をみずからに等置する、これが、商品が商品であることの出発点なのであり、このように他の商品との交換関係においてある商品を、マルクスは分析しているのである。

 商品は使用価値と価値との直接的統一をなす。

 マルクスは、「商品はさしあたり、その諸属性によって人間の何らかの種類の欲望を充たすところの、一の外的対象・一の物・である」、「ある物の有用性は、そのものを使用価値たらしめる」、と言っている。これが、商品の一側面である使用価値の規定である。

 或る一定の量の或る種類の使用価値である商品は、何らかの量の他の種類の使用価値である商品と交換されうる。後者はもろもろの種類のそれである。この後者が前者の交換価値をなす。

 この関係をたちいって考察しよう。

 一単位量のA商品は、x量のB商品をみずからに等置する。こうすることによって、二商品の使用価値の種類の違いは直接的に消失し、両者は等質なものとなると同時に、量的に等しいものとなる。この等質なものが価値である。この二商品はともに労働の生産物であり、それぞれの商品には種類の異なる労働がふくまれているのであるが、この二商品の等値によって、二商品にふくまれている労働の種類の違いは直接的に消失し、両者は等質なものとなると同時に、量的に等しいものとなるのである。種類が異なるという労働のこの側面は具体的有用労働と規定され、等質なものとしてのその労働は抽象的人間労働と規定される。すなわち、商品の実体をなすところのこれに対象化されている労働は、使用価値の実体としては具体的有用労働と規定され、価値の実体としては抽象的人間労働と規定されるのである。