「最低賃金1500円」を叫ぶのは何のためか。与党も野党も、労働者のためではない
与党も野党もおしなべて「最低賃金、時給1500円」「1500円以上」を叫ぶ。彼らがこんなふうに叫ぶのは、何のためか。それは、労働者のためではない。それは、見せかけであり、労働者をだますためである。だまして票を得るためである。
彼らがそう叫ぶ真の狙いは、日本資本主義の延命を図るためなのである。労働者の賃金を上げなければ、日本資本主義は衰退していく一方なのである。だから、「1500円」の叫びには、おしなべて、そう叫ぶ者たちの日本ナショナリズムが、日本資本主義の衰退をくいとめ、日本国家を世界に雄飛させたい、という日本ナショナリズムがつらぬかれているのである。
もっとも饒舌であり本心を語っているのは、経済界のイデオローグである経済同友会の代表幹事・新浪剛史である。ローソン、サントリーなどの経営者をやってきた男である。
この男は言う。
「(1500円を)払えない経営者は失格ということだ」、と。
この言にしめされている、日本独占ブルジョアジーの意志は何か。それは、日本の産業構造を再編したい、諸企業を淘汰したい、ということなのである。
独占資本家どもも、政治家どもも、おしなべて言う。人材の流動化を実現しなければならない、労働者たちはスキルアップして、衰退産業から成長産業にうつれば、賃金が上がり、生活がうるおうではないか、と。
この言が、日本の政治経済構造を、日本の国家独占資本主義を、どのように再編することを狙うものであるのか、ということを、われわれは分析しなければならない。
その構造を見よう。
労働市場がひっ迫しているという現在の物質的諸条件のもとで、政府・財界・諸政党・「連合」をはじめとする労働組合の指導部が、「賃上げを」と大合唱し、政府・金融当局は、物価を上昇させ賃上げを誘導する財政・金融・労働政策を実施する。そうすると、大きな企業利益をあげており豊富に資金を蓄積している諸企業が、新たな人材を自企業に呼びこむために賃金を上げる。このような諸企業は、AI技術・IT(情報技術)を開発しその技術諸形態を生産している諸企業、およびその技術を導入し駆使してその生産物と生産過程を技術化しているところの先端的な製造業やインターネット・サービス業やまた金融業の諸企業である。
これらの諸企業は、みずからの労働過程(直接的生産過程、サービスの生産過程、そして流通過程などなどを遂行する労働過程)を技術化するために、先端的な技術を導入すると同時に、相対的に高い賃金を払って、高度な技術性をもった労働者を雇い入れ、旧来の古さくなった技術性しかもっていない労働者を放出する。雇い入れられた労働者は、新たに労働市場に参入した若い労働者か、他企業から引っこ抜かれた労働者かである。放出された労働者は、技術性の相対的に低い・よりいっそう過酷な労働を強制される諸産業か、同じ産業部門であれば付随的な諸作業に、自分の就職口を見いだす以外にない。
政府・金融当局が物価を上昇させる政策を実施しているという条件のもとでは、これらの諸企業は、技術性の高い労働者たちに、他企業よりも相対的に高い賃金を支払っても、ゆるやかなインフレーションによって実質賃金を徐々に切り下げていくことができる。高い買い物にはならない。このことを基礎にして、翌年にも、これらの諸企業は賃金を上げる。放出された労働者は、転職によって名目賃金が大幅に下がっただけではなく、物価の高騰によって実質賃金はさらに下がる。彼らは、労働者階級の内部の下の階層に転落するのである。
これらの諸企業の対極において、従来型の製造業、従来型のサービス業、そして小売業などの諸企業、とりわけ下請け・孫請けの諸企業、また個人経営は没落し、倒産する経営が相次ぐ。
経営が成り立たなくなった諸企業から放出された労働者や廃業した個人経営主は、これまでよりも名目賃金が低く過酷な労働が強いられる仕事につく以外にない。これらの労働者たちは、これまでよりも厳しい労働につくための技能を身につけるので精一杯なのであって、いわゆるスキルアップというようなことができるわけではない。スキルアップという名の技術性の高度化をなしうるのは、あらかじめ成長産業の諸企業に就職した若い労働者にかぎられるのである。
このようなかたちで産業構造の再編がなされるのであり、新興の成長産業と没落産業の差はどんどん開いていくのである。このばあいに、下層の労働者を雇う諸業種はなくなるわけではない。そのような諸業種は、たえず転落してきた労働者によって労働力が補給されるからである。給食業の盛り付け・皿洗い、トイレ掃除などの清掃、夜間の警備、工事現場の交通整理などなどの職に就く者が、下層労働者を形成する。これらの労働者の時給は最低賃金に張り付いたままであり、物価の高騰によって実質賃金は切り下げられ、生活苦に突き落とされる。これらの労働者たちは、老化や病気によって労働過程から脱落する。転落してきた労働者がそのあとがまとなるのであって、これらの諸業種の諸企業は、決してなくなることはなく、どれだけ労働者を苦しめいじめぬき、彼らから労働を搾り取るのかの度合によって淘汰をくりかえしながら、存続しつづけるのである。
これらの諸企業は、最低賃金が引き上げられることにたいしては、一人の労働者にやらせる仕事の量は同じで、その労働者を職場に来させる一日の労働時間を短くするか、出勤日を少なくするかして、その労働者によりいっそうの労働強化を強いるとともに、月ごとに支払う賃金を削減する、というかたちで対処するのである。この悪辣さは、最低賃金の引き上げの数値によって、おおい隠されるのである。
政府・財界・諸政党・労働貴族どもが叫ぶ「最低賃金1500円」とはこのようなものなのである。
このようにして、労働者階級の階層分化はどんどんと進行するのであり、極貧層がうみだされるのである。
これが、政府・財界・諸政党・労働貴族どもが望む「産業構造の高度化、人材の流動化」のありのままの姿なのである。
労働者たちは、国会議員選挙とは、このような政治家が「一票をください」と頭を下げるものなのだ、ということを見ぬこう!
労働者たちは、このような現代資本主義をその根底からくつがえすために、みずからを階級として組織し、決定的瞬間にソビエト(労働者評議会)を創造する、ということを意志しよう!