ロシアと米欧日は金融的・産業的に分断——ロシアは対外債務の返済を凍結

ロシアと米欧日は金融的・産業的に分断——ロシアは対外債務の返済を凍結

 

 ロシア政府は、米欧日など48の国と地域を「非友好的な国や地域」に指定し、これらの国と地域の債権者に、自国通貨ルーブルでの債務の返済を受け入れるように迫った(3月7日)。これは、自国に敵対する国ぐにの中央銀行・金融機関・諸企業・諸個人への債務の返済を実質上凍結=拒否する、というものである。ルーブルでの返済を受け入れる者はいないからである。これは、債権者の側からすれば、ロシアの国債やその他の債権のデフォルト(債務不履行)を意味する。ロシア政府の側から言えば、これは、実質上のデフォルトなのだけれども、ルーブルで返済すると言っているのだからデフォルトではない、という形式を与えた、つまりそう言いくるめたものである。

 この措置は、米欧日が、自国の中央銀行やその他の金融機関に存在するロシアの資産を凍結したことにたいする対抗手段をなす。

 米欧日とロシアの双方は、自国に存在する相手国の資産や返済しなければならないものを奪いとり、たんなる紙ぺらならぬ電磁的記載の痕跡にした、ということである。ここに、両者は、——ヨーロッパ諸国がロシアから輸入した天然ガスの代金を支払うルートだけは維持したうえで、——相互に金融面において分断したのである。米欧日とロシアとは、人民元を媒介としてしか、金融的につながらなくなったのである。双方が電磁的記載の痕跡にした分だけ、全世界的な金融的バブルが収縮した、といえる。

 産業面においても両者の分断がすすんでいる。エクソンモービルは「サハリン1」事業から撤退することを発表したのであり、これによってすべての国際石油資本(メジャー)がロシアから撤退することとなった。その他の諸産業の諸企業もそうである。輸送面においても、相手国の航空機を自国の領空を飛行させない、という措置の実施がおしすすめられている。

 アメリカ政府は、ロシア産の原油および天然ガス輸入禁止措置をとった。イギリス政府も、年内には、ロシア産の原油の輸入を停止する、とした。ドイツなどのヨーロッパ諸国は、——天然ガスだけではなく、——原油もロシアから輸入せざるをえない、という態度をとった。

 このようにアメリカ政府の意向が貫徹しなかったことからして、原油先物価格は——WTIおよびブレントともに——一時は1バレル=140ドルにまで高騰したのであったが、いま(3月9日9時すぎ)は120ドル台後半で推移している。世界各国の株価も、連日大幅に下げていたのであったが、いまは小幅な下げにとどまるか、上昇に転じるかしている。

 中国の税関当局が発表した1~2月の貿易統計によれば、ロシアとの貿易総額は前年同期比38・5%増であった。これは、中国全体の貿易総額の伸び率15・9%を大きく上回るものである。このことは、ロシアから原油天然ガスの輸入を増やすとともに、機械などの輸出を増やしたことにもとづく、と考えられる。ロシアが米欧日から締め出されたところに中国がくいこんだ、ということである。

 さらには、中国の諸企業や金融諸機関は、米欧日の諸企業が撤退した後の諸企業を買収することを虎視眈々と狙っている、と考えられる。これは、中国の金融資本のロシアへの資本輸出の現下の形態をなす。

 ロシアの国家権力者プーチンは、領土・勢力圏の拡張の帝国主義的野望にもえてウクライナへの軍事侵略を命令して強行し、そうすることによって同時に、自国ロシアが帝国主義大国中国の金融的および産業的の奴隷となる道を選んだのである。

 東西の帝国主義諸国家の世界の支配をその根底からくつがえすために、全世界のプロレタリアートはみずからを階級として組織しよう!