フランスの若者の状況と極右の伸長——移民は「競争相手」
フランスの若者は次のような状況に突き落とされているのだ、という。——
彼らは、毎日の生活費や雇用問題、年金問題、何よりも公共サービスの低下などに悩まされている。病院に行くのさえ、それにかかる費用はどんどん高くなっている。こういった状況から、若者たちは、「グローバル化の時代において、自分たちは勝ち組になれていない」と感じている。親は自分の子どもに「私よりもよい生活ができる」とは言えない。ましてや「祖父母の世代よりもよい生活ができる」とは間違っても言えない。
若者たちは、「移民は労働するにあたって競争相手であり、フランス的な暮らしを揺るがす存在だ」と感じている。
大学に進学していない18~24歳の若者の間でもっとも支持されているのが、極右の国民連合だ。国民連合の党首バルデラに人気が集まっている。——
ヨーロッパ各国にはアフリカや中東から移民や難民が押し寄せており、欧州連合(EU)は、100万人以上が流入した2015年の難民危機が再来する、と警戒を強めている。
イタリアはその最先端をなす。アフリカから地中海を渡ってヨーロッパをめざす人びとの最初の経由地であるからだ。この地に移民が殺到した。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の発表によれば、2023年1年間にイタリアに到着した人数は15万7000人を超え、2022年比で約50%増えた。
イタリアの国家権力者メローニは、2023年11月に、「不法移民」を隣国アルバニアに送る計画を発表した。その計画は、最大3000人を一時的に収容する施設をアルバニアに建設して、海上で救助した「不法移民」をイタリアに上陸させずに施設に直送し、施設での審査で難民資格が得られなかった人は送還する、というものである。2024年8月にその運用が開始される。欧州人権法では一度入国させると追放が困難なことのゆえに、メローニは、第三国に送る方法は移民流入に悩むヨーロッパ各国の「モデルになる」、と自信を見せた。
フランスでは国家権力者マクロンが2023年12月に移民法を成立させた。マクロン政権は賛成多数で採択するために、移民の制限などを訴える極右「国民連合」の要望に応えて法案を修正した。フランス国内で生まれた外国人の子どもの国籍取得要件の厳格化などを盛りこんだのである。フランスの新聞ルモンドは、法案は「(極右の)死の口づけを受けた」と評した。
甘い顔の28歳のジョルダン・バルデラを党首におしたてたマリーヌ・ルペンの国民連合は、移民の規制の強化、EU予算へのフランスの拠出負担の軽減、フランスの事業者や農業従事者の優遇、そして低所得の人びとを救済するための国家財政支出の増大などを主張しているのである。これは、フランス第一主義のイデオロギーを貫徹したものにほかならない。
フランスの若い労働者たちは、失業に脅え、日々の生活に苦しんで、このフランス第一主義のイデオロギーにからめとられているのだ、といわなければならない。
フランスのプロレタリア党は、このような労働者たちをこのフランス・ナショナリズムから解き放ち、移民労働者たちとの連帯と団結をかちとるかたちにおいてプロレタリアートとして階級的に組織するために、イデオロギー的=組織的にたたかわなければならない。