世界金融危機迫る!

世界金融危機迫る!

 

 アメリカで、シリコンバレー銀行(SVB)とシグネチャー銀行とが経営破綻した。これは、2008年に経営破綻したワシントン・ミューチュアルに次ぐ史上2、3番目のものである。この事態は、いまや、リーマンショック時のような金融危機が切迫していることをしめした。アメリカ大統領バイデンと財務省連邦準備制度理事会FRB)は、ただちに、預金の全額を保護することを表明した。これは、アメリカ国家権力者と金融当局のものすごい危機意識をしめすものである。

 アメリカではドット・フランク法(金融規制改革法)で預金保護の上限は25万ドル(約3400万円)と定められているのであるが、アメリカ連邦預金保護法(FDI法)に設けられているこれの例外規定を適用することを、財務省や連邦預金保護公社(FDIC)やFRBが協議して決めた、ということなのだからである。

 FRBは、「銀行タームファンディングプログラム(BTFP)」を新設し、金融機関を対象に、アメリカ国債住宅ローン担保証券を担保として、最長1年の融資をするのだ、という(「日本経済新聞」電子版、2023年3月14日更新)。

 これは、FRBが資金を金融機関に注入するというのりきり策であるが、金融危機への歩みは、はたして1年でおさまるのであろうか。

 SVBは、新興の諸企業から得た大量の預金でもってアメリカ国債を買う(融資先を獲得することができず)というかたちで利益を取得してきた。FRB金利を引き上げていくという条件のもとで、諸企業が資金繰りのために預金を引き出していく、と同時に、アメリカ国債の価格が低下したことに規定されて多額の含み損を抱えこむ、というように、先の構造が逆回転し、SVBは経営上の破綻に追いこまれたのである。

 この問題は、アメリカ政府が大量の国債を発行してきたということを考えるならば、どの金融機関も抱えこんでいるものだ、といえるのである。

 急激なインフレーションを抑えこむためのFRBの金融引き締め政策の貫徹は、大量の国債を基礎として膨れあがった金融的バブルを破裂させ、景気の上昇という仮構をつくりあげてきた資本の過剰を、生産設備と労働力との過剰というかたちで、一挙に露呈させることとなるのである。

 FRBは、はたして、金利の引き上げによって金融的バブルを縮小しつつ、同時に、金融諸機関にドル資金を注入する、という曲芸を演じきることができるのであろうか。ウクライナに侵略したロシアへの対応と、伸長する中国への対抗を条件として、アメリカ帝国主義は、その政治経済構造の腐朽性をよりいっそう深めているのである。

 経済的危機をのりきるために労働者・人民の搾取と収奪と抑圧を強化する現代帝国主義をその根底から転覆するために、全世界のプロレタリアートはみずからを階級として組織しよう!