小さいほうのサボテンが花を咲かせた
小さいほうのサボテンの花がひとつ咲いた。これは、2~3日前にいっぱい花をつけた大きなサボテンの横にあるものである。
この二つのサボテンは、かつて隣の部屋の人が引っ越したときに私の部屋のドアの横に置いていったものであった。持っていけないので育ててくれ、ということであったのであろう。
そのときには、この小さいサボテンのほうが大きかったのである。部屋が狭いので、鉢は外に置いた。
その後、足場をつくった工事人に鉢が蹴飛ばされて壊れ・ころがっているのを直接地面に植えたとき、こちらのほうのサボテンの根が全部腐ってすっぽんぽんになり、地面にだるまを置いているようになった。しかも最下部がジクジクになってしまった。新たな環境は、このサボテンにとって厳しかったのであろう。
このサボテンは、冬になるとまっ茶色になり収縮した。夏になってようやく緑気を帯びた。これが何年もくりかえされた。そのうちに、隣の小さかったサボテンのほうが大きくなり、いくつもの子どもをつけた。この子どもの二つを、通りかかりに「うちはうまく育てられなかったんですよ」とあいさつした人にあげた。
この冬に入る前に、ようやくにして根が生えたようであった。今年初めて花を咲かせた。
われわれだけではなく、サボテンもまた、その場に根づくのは大変なのであろう。
追記
いまさっき、通りかかった人は「きれいに咲いてましたねえ。見とれてしまった。上手ですねえ。冬でもこのままですか」、と言ってくれたのだが、ほったらかしにしているだけである。もしも何らかの違いがあるとするならば、サボテンの生命力を信じて待つ忍耐力が違うのであろう。プロレタリアートを信頼するように。