〔15〕 商品およびこれにふくまれている労働の質的側面と量的側面――「質」という規定について

 〔15〕 商品およびこれにふくまれている労働の質的側面と量的側面――「質」という規定について

 

 

 マルクスは、商品の使用価値および価値を、商品の質的側面および量的側面と規定している。それとともに、商品の使用価値の実体をなす具体的有用労働および商品の価値の実体をなす抽象的人間労働を、商品にふくまれている労働の質的側面および量的側面と規定している。ともに、〈質と量〉という対概念でもって規定しているのである。

 マルクスは次のように論じている。「商品に含まれている労働は、使用価値に関連しては質的にのみ意義をもつが、価値の大いさに関連しては、それが質のどんづまりたる人間的労働に還元されているので、量的にのみ意義をもつ」(長谷部訳、青木書店版、一二九頁)、と。

 『資本論』の商品論において、前者の側面つまり具体的有用労働にかんしては、「質的に相異なる有用的労働」「労働の相異なる諸々の質」「種類を異にする諸商品のうちに含まれている・種類を異にする・労働」というように規定されているのであって、この表現に端的にしめされるように、マルクスは「質」という概念をもちいて「質的に相異なる」と表記するばあいには、つねにかならず、「種類を異にする」ということを含意しているのであり、商品にふくまれている労働の多種多様性を、すなわち、具体的有用労働は多種多様であるということを、言いあらわしているのである。