〔5〕 幼虫から成虫へ――ここがロードゥス島だ、ここで跳べ!

 〔5〕 幼虫から成虫へ――ここがロードゥス島だ、ここで跳べ!

 

 

 『資本論』第一巻 第二編 第四章「貨幣の資本への転化」に次の叙述がある。

 「だから資本は、流通から発生しえないのと同様に、流通から発生しえないのでもない。それは流通から発生しなければならぬと同時に、流通において発生してはならぬ。

 ……幼虫から成虫への彼〔資本家〕の発展は、流通部面で行われねばならず、しかも流通部面で行われてはならぬ。以上が問題の条件である。ここがロードゥス島だ、ここで跳べ!」

 私はこの叙述に魅かれた。

 これぞ、弁証法! である。

 「ここがロードゥス島だ、ここで跳べ!」というのは、調べてみると次のようなことだった。

 これは、イソップの寓話に由来する。古代ギリシャでのことであるが、ある男が「俺はロードゥス島で、記録に残る跳躍をやったんだ」、と吹聴した。これを聞いていた別の男が言った。「ここがロードゥス島だ、ここで跳べ!」と。

 資本家の幼虫である貨幣所有者は、流通界すなわち市場において、それの使用価値が価値の源泉であるような、つまりその使用価値の消費が労働の対象化でありしたがって価値の創造であるような一商品、すなわち労働力を見いださなければならない。